後継者が見つからないまま、気づけば数年が過ぎている。そんなふうに感じていませんか。
「後継者 いない」と検索している先生は、少なくありません。多くの方が、心のどこかで「継ぐ人がいないなら、いずれ廃業するしかないのだろう」と考えています。
でも、それは思い込みかもしれません。後継者がいなくても、道は一つではありません。大きく分けて3つあります。
この記事では「売りましょう」とは申し上げません。廃業・育成・M&A(第三者への承継)を中立に並べ、後悔しない選び方を先生と一緒に考えます。まずは全体像から、落ち着いて見ていきましょう。
「後継者がいない=廃業」ではありません

まず、いちばんお伝えしたいことがあります。後継者がいないことと、廃業することは、イコールではありません。
その不安は、あなただけのものではありません
「自分が倒れたら、顧問先と職員はどうなるのか」。ふとした瞬間に、そんな重さがよぎることはありませんか。
同じ不安を口にされる先生は、本当に多くいらっしゃいます。息子さんは別の道に進み、番頭格の職員さんはまだ資格を持っていない。長く付き合ってきた顧問先の顔が浮かぶほど、簡単には「たたむ」と言えない。そういうお気持ちは、よく聞きます。
この不安は、事務所を大切にしてきた証でもあります。一人で抱え込む必要はありません。まずは「自分だけではないのだ」というところから、始めていただければと思います。
「継ぐ人がいない」からといって、選べる道は一つではない
後継者がいないと分かったとき、多くの先生が「廃業」の二文字を思い浮かべます。けれど、実際に選べる道は一つではありません。
ざっくり挙げると、次の3つです。
- 事務所をたたむ「廃業」
- 外から人を迎え、時間をかけて育てる「外部採用・育成」
- 第三者に引き継ぐ「M&A」
どれが正解、ということはありません。事務所の規模、顧問先との関係、先生ご自身がこの先どう過ごしたいか。状況によって、ふさわしい道は変わります。
大事なのは、選択肢を知った上で選ぶことです。知らないまま一つに絞ってしまうのは、少しもったいないかもしれません。
いま、税理士事務所の後継者不在はどうなっているのか
先生お一人の悩みに見えて、実は業界全体が同じ入り口に立っています。少しだけ、周りの景色も見てみましょう。
数字で見る、税理士業界の高齢化
日本税理士会連合会の資料によると、税理士登録者の平均年齢は60歳を超えています。60歳以上の割合は、およそ半数にのぼります。
一方で、20代・30代の税理士は多くありません。若い世代の登録が少ないぶん、事務所を引き継ぐ次の担い手を、身近で見つけにくい構造になっています。
つまり「後継者が見当たらない」のは、先生の努力不足ではありません。業界の年齢構成そのものが、そうさせている面が大きいのです。
「後継者不在」が廃業につながりやすい背景
中小企業庁の『中小企業白書』によると、2024年の廃業率は5.61%で、業種別で見ても高い水準にあります。後継者が決まらないまま時間が過ぎ、やむなく事務所をたたむケースが背景にあると考えられます。
ただ、この数字を見て焦る必要はありません。むしろ逆です。早めに知っておくほど、打てる手は増えます。時間があるうちに選択肢を並べておけば、追い込まれてから決める事態を避けられます。
後継者がいないときの「3つの道」とは
ここからは、3つの道を一つずつ言葉にしていきます。比べるのはこの後です。まずは、それぞれがどういうものかを、落ち着いて掴んでいきましょう。
① 廃業という道
廃業は、事務所を閉じて業務を終える選択です。顧問先には他の事務所へ移っていただき、職員さんには退職していただく形になります。
「後ろ向きな選択」と感じる方もいますが、必ずしもそうではありません。顧問先が少なく、引き継ぎ先の目星がついている場合など、区切りをつけやすい状況では、納得のいく終わり方になることもあります。
一方で、長く積み上げた事務所の価値が、手元にほとんど残らない形になりやすい点は、知っておきたいところです。
② 外部から後継者を採用・育成する道
外から資格者を迎え、あるいは今の職員さんに資格を取ってもらい、時間をかけて後を託す道です。文化や顧客との関係を残しやすいのが持ち味です。
ただ、育成には数年単位の準備期間がかかります。手順やタイミングには、この道ならではのポイントがあります。とくに事務所の職員さんに継いでもらう進め方は、準備の順番で結果が変わってきます。
この内部承継の具体的な進め方は、税理士事務所の内部承継|職員に継ぐ5年計画と手順で詳しくご説明しています。育成を軸に考えたい先生は、そちらをご覧ください。
③ M&A(第三者への承継)という道
M&A(エムアンドエー、合併・買収の意味)は、事務所を第三者に引き継ぐことを指します。難しく聞こえますが、要は「信頼できる相手にバトンを渡す」という選択です。
廃業と違い、顧問先との契約や職員さんの雇用を、続く形で引き継げる可能性があります。顧問先と職員を守りながら次へつなぐ方法にもなりえます。
とはいえ、気になる点も多いはずです。契約はどうなるのか、いくらになるのか。この道については、少し後で詳しく見ていきます。
3つの道を「4つの軸」で比べてみる
3つの道が見えてきたところで、いよいよ横に並べてみましょう。判断の軸は「コスト」「時間」「従業員・顧問先への影響」「自身の手取り」の4つです。
どれが上位ということではありません。先生が何を最も大切にするかで、答えは変わります。
比較表:コスト・時間・従業員/顧問先への影響・手取り
| 判断軸 | 廃業 | 外部採用・育成 | M&A |
|---|---|---|---|
| コスト | 比較的小さい傾向。ただし清算・引き継ぎ対応の手間や費用が生じる場合も | 採用・育成費用が中長期で発生しやすい | 仲介・専門家への費用が発生する場合がある(形態により幅) |
| 時間 | 比較的短く区切れる傾向。ただし顧問先引き継ぎに一定期間 | 育成には数年単位の準備期間がかかる傾向 | 相手探しから引き継ぎで数ヶ月〜1年程度が目安(案件により変動) |
| 従業員・顧問先への影響 | 職員は原則雇用終了・顧問先は他事務所へ移行が必要になりやすい(影響大きめ) | 職員の雇用・顧問先との関係を維持しやすい | 顧問契約・職員雇用の継続を前提に進めやすいが相手先との相性・条件次第 |
| 自身の手取り | 事務所の資産価値は現金化されにくく手元に残りにくい傾向 | 承継の形(無償/有償)により幅が大きい。段階的引退で収入を得る形も | 事務所の価値が対価になりうる(一律の相場はなく事務所ごとに大きく変わる) |
数字を入れていないのは、あえてです。同じ道でも、事務所の状況で結果は大きく変わります。表は「傾向」を掴むための地図とお考えください。
表だけでは見えない「相性」
表で並べても、決め手にならないことがあります。最後は、先生が何を優先するかとの「相性」です。
- もし、区切りをつけて早く楽になりたいなら、廃業を検討する価値があります。
- もし、事務所の文化や職員を何より残したいなら、育成が合うかもしれません。
- もし、顧問先と職員を守りつつ、積み上げた価値も手元に残したいなら、M&Aを検討する余地があります。
どれかが優れているわけではありません。先生の「これだけは譲れない」を、まず言葉にしてみてください。それが、道を選ぶ最初の一歩になります。
M&Aという選択肢を、もう少し深く
3つの中でいちばんイメージしにくいのが、M&Aかもしれません。ここで、よく聞かれる二つの疑問にお答えします。
顧問先との契約や職員の雇用は、どうなるのか
いちばん気になるのは、ここだと思います。長く付き合ってきた顧問先と、支えてくれた職員さんのことです。
M&Aでは、顧問契約の継続と職員の雇用維持を前提に、話を進めるケースが多く見られます。「必ず全員そのまま」とお約束はできませんが、守ることを条件に交渉していく形が一般的です。引き継ぎの丁寧さや、相手先の方針によって、着地は変わってきます。
だからこそ、相手選びが大切になります。価格だけでなく「この人になら任せられるか」という目線が、後悔しない鍵になります。
「いくらになるのか」の考え方
もう一つの疑問が「いくらになるのか」でしょう。ここは、正直に申し上げます。一律の相場は、ありません。
業界で一般的に語られる目安として、年間売上の0.8〜0.9倍、あるいは営業利益の2〜5年分といった幅が挙げられます。ただ、これはあくまで目安です。顧問先の質、職員の体制、地域性などで、実際の評価は大きく動きます。
「相場はいくらですか」という問いに、幅なしで即答する相手には、少し注意が必要かもしれません。誠実な相手ほど、幅を持って話すものです。
なお、事業承継に関わる税制には、優遇を受けるための特例措置があり、適用には期限が設けられています。使える制度があるかどうかで、手元に残る額も変わってきます。焦る必要はありませんが、早めに知っておくほど、選べる幅は広がります。
後悔しない選び方:5年後・10年後から逆算する
ここまでで、3つの道の輪郭が見えてきたと思います。最後に、選び方そのもののコツを、一つだけお伝えします。
「今すぐ決める」より「決められる状態を作る」
いきなり「どの道にするか」を決める必要はありません。おすすめしたいのは、5年後・10年後にどうありたいかから、逆算して考えることです。
たとえば「70歳では第一線を退きたい」と思うなら、そこから逆算すると、いつ頃までに何を整えておけばよいかが見えてきます。時間があるほど、選べる道は広がります。育成という選択も、じっくり相手を探すM&Aも、時間という余白があってこそ成り立ちます。
逆に言えば、先延ばしにするほど、選べる道は静かに減っていきます。急かすつもりはありません。ただ、時間は味方にできる資産です。
動き出すのに、まだ「売る」と決めている必要はない
「情報を集める=売る決断」ではありません。ここは、はっきりさせておきたいところです。
現状を整理する。選択肢を知る。それだけでも、立派な前進です。多くの先生は「決めてから相談」と考えますが、順番は逆でも構いません。むしろ「決めるために相談する」ほうが、自然な流れです。
まだ何も決まっていない段階こそ、いちばん相談しやすいタイミングかもしれません。
逆算してみて「まだ何年も先の話だ」と感じた先生も、「思ったより時間がない」と感じた先生も、今の考えを一度だけ言葉にしてみると、頭の中が整理されることがあります。まだ何も決めていない段階のご相談こそ、私たちは歓迎しています。 廃業も含めて、一緒に考えてみる(無料相談)
よくある不安Q&A
最後に、先生方からよくいただく不安に、Q&A形式でお答えします。
Q1. M&Aをすると、顧問先は離れてしまいませんか?
引き継ぎの進め方次第で、継続を前提に進められるケースが多く見られます。相手先と一緒に、丁寧に説明の場を設けることで、関係をつなぎやすくなります。相性のよい相手を選ぶことが、いちばんの安心材料になります。
Q2. 長く一緒に働いてきた職員は守れますか?
雇用の継続を条件に交渉していく形があります。「必ず」とはお約束できませんが、守ることを前提に話を進めるのが一般的です。職員さんの処遇を重視する相手を選べるかどうかが、鍵になります。
Q3. 手取りはどれくらい残るのでしょうか?
事務所によって大きく異なり、一律の相場はありません。使える税制によっても変わってきます。だからこそ、大まかな目安ではなく、先生の事務所の実情に沿って専門家と試算するのが、現実的な進め方です。
Q4. まだ何も決めていないのですが、いつ動くべきですか?
決めていなくても、情報収集は早いほど選択肢が広がります。「5年後・10年後にどうありたいか」から逆算すると、動き出す時期が見えてきます。まずは現状を整理するところから、で十分です。
まとめ
最後に、大切なことをもう一度お伝えします。
後継者がいないことは、廃業を意味しません。廃業・育成・M&Aという3つの道があり、どれかが正解ということもありません。答えは、先生が何を大切にするかで決まります。
私たちは「売りましょう」とは申し上げません。先生の「これだけは譲れない」を一緒に言葉にしながら、後悔しない道を一緒に考えます。まだ決めていなくて、大丈夫です。決めるために、話を始めてみませんか。
「どの道を選ぶか」を、一人で抱えなくて大丈夫です
ここまで、廃業・外部への承継・M&Aという3つの道を見てきました。でも、記事を読んだだけで「これだ」と決められる先生は、そう多くないのではないでしょうか。
それで良いのです。決めてから相談するのではなく、決めるために相談する。それが本来の順番だと、私たちは考えています。
エナウトパートナーズは、「売りましょう」とは申し上げません。廃業という選択肢も含めて、先生の事務所にとって何が一番納得のいく道なのかを、第三者の視点でご一緒に整理します。売ると決めていなくても、まったく構いません。
まずは30分、お話を聞かせていただくところから。オンラインでも対応しています。
※ 無料相談です。その場で結論を出す必要はありません。先生のペースで、これからのことを一緒に考える時間としてお使いください。