同年代の先生が事務所をたたんだ、あるいは誰かに引き継いだ。そんな話を聞いて、ふと「自分はあと何年やれるだろう」と考えることはありませんか。急いで何かを決める必要はないけれど、頭の隅にずっとある。その感覚は、多くの先生が抱えているものです。この記事では、税理士業界のこれからを左右する3つの流れを、一緒に整理してみましょう。業界全体の廃業の動きを数字で詳しく知りたい方は、業界動向をまとめた別の記事もご覧いただけます。

税理士業界では今、3つの変化が重なっています

これからの税理士業界を落ち着いて見つめる事務所オーナー

ひとつずつは以前から耳にしていた話かもしれません。それが今、同時に動き始めているところに、これまでとの違いがあります。

重なって動く3つの流れ

税理士業界のこれからを考えるうえで、押さえておきたい変化は次の3つです。

  • 若手税理士の減少(登録者の高齢化が進み、20〜30代が少ない)
  • AIの進化(クラウド会計などで顧問先の記帳・仕訳が自動化に向かう)
  • M&Aの活発化(事務所の合併やグループ化、第三者への承継が増えている)

廃業の動き自体も静かに進んでいます。中小企業庁『中小企業白書』では、税理士などが含まれる業種の廃業率が業種別で上位に入っていると報告されています。具体的な件数の推移は、業界動向をまとめた別の記事で詳しく確認できます。

この記事で見ていくこと

3つの変化が、60代のオーナー先生の選択肢にどう関わってくるのか。それをひとつずつ見ていきます。今すぐ動くための記事ではありません。頭の中を少し整理しておくと、いざ考えるときの判断が楽になる。そういう目的で読んでいただければと思います。

変化① 若手税理士の減少——後継者候補ゼロの事務所が増える理由

「うちの後を継いでくれる人は、いるだろうか」。ふとそう思ったとき、業界全体の年齢の偏りを知っておくと、その問いの背景が見えてきます。

数字が語る「選択肢の狭まり」

日本税理士会連合会の第7回税理士実態調査(2024年)によると、税理士のうち60歳以上が全体の約53.6%を占めています。70歳以上も27.9%にのぼります。一方で20〜30代の若手は6.6%にとどまります。

この数字が意味するのは、「税理士全体が高齢化している」という一般論だけではありません。若い担い手が少ないということは、事務所を引き継いでくれる候補もまた、業界全体で限られてきているということです。

急かす変化ではなく、選択肢を減らす変化

後継者がいないことは、今日明日の決断を迫るものではありません。ただ、放っておくと選べる道が少しずつ狭まっていく。そういう性質の変化です。

だからこそ、焦って何かを決めるのではなく、「誰か思い浮かぶ人はいるか」を今から頭の片隅に置いておく。それだけでも、後の判断はずいぶん違ってきます。

変化② AI進化——「仕事がなくなる」より「顧問先の行動が変わる」

「AIで税理士の仕事はなくなるのか」。そんな見出しを目にすると、少し落ち着かない気持ちになるかもしれません。でも、見る角度を変えると景色が違って見えます。

変わるのは、税理士側より顧問先側

AIの進化でまず変わるのは、実は税理士自身の仕事のやり方より、顧問先の行動のほうかもしれません。クラウド会計ソフトが広まり、顧問先が自分で記帳や仕訳を自動化し始めています。

そうなると、単純な記帳の代行という需要は少しずつ減っていく可能性があります。代わりに、経営の相談や事業承継の支援といった、より踏み込んだ業務への期待が高まっていく。そんな流れが考えられます。

60代オーナーにとっての現実的な影響

とはいえ、今すぐ顧問料が下がるという話ではありません。変化はもっとゆるやかで、5年から10年くらいのスパンで、顧問先が求めるものが少しずつ変わっていくイメージです。

その変化にどう向き合うかも、道はひとつではありません。自分で新しい業務に取り組む。後継者に任せる。あるいは承継後に新しいオーナーが対応する。どれもありうる選択肢です。

変化③ M&A活発化——業界再編は「脅威」か「選択肢の追加」か

「事務所を売る」という言葉に、どこか引退や敗北のような響きを感じる方もいるかもしれません。でも、今の業界再編はもう少し多様な意味を持ち始めています。

業界再編で起きていること

いま業界では、同業どうしの合併や、複数事務所のグループ化が増えています。個人事務所を税理士法人や大手が引き継ぐケースも見られます。事務所を引き受けたいという買い手側の動きも活発になってきました。

こうした背景には廃業の増加もあります。中小企業庁のデータでは、関連する業種の廃業件数が大きく伸びたことが報告されています。件数の詳しい推移は、業界動向をまとめた別の記事をご覧ください。

売却・承継は「引退」ではなく「選択肢の追加」

大切なのは、売却や承継が「事務所を終わらせる話」とは限らない、ということです。むしろ選べる道がひとつ増えた、と捉えることもできます。

ここで初めて、4つの道を並べてみましょう。廃業/継続/内部承継/M&A(第三者への売却)。一般的に、早めに選択肢を把握しておくほど、判断の幅は広がると言われています。

3つの変化が重なると、あなたの選択肢はどう変わるか

ここまで見てきた3つの流れ。バラバラに眺めると漠然としますが、重ねてみると、自分の立ち位置が少し見えてきます。焦らず、地図を広げる気持ちで見ていきましょう。

3つの潮流と、あなたへの影響

まずは3つの変化を、オーナー先生への影響という視点で並べてみます。これは今すぐ何かを決めるための表ではありません。

潮流 変化の内容(事実) あなたへの影響のタイムライン あなたに関係する問い
①若手減少 60歳以上が約53.6%、20〜30代は6.6%(日本税理士会連合会 第7回実態調査2024) 中長期。後継候補が業界全体で少ない 引き継いでくれる人を思い描けるか
②AI進化 顧問先のクラウド会計利用が広がる 5〜10年で顧問先の期待が変化しうる 顧問先の依頼内容は変わってきているか
③M&A活発化 合併・グループ化・第三者承継が増加(中小企業庁データ) 今も進行中。買い手の動きは活発 承継や売却を選択肢に入れているか

(出典:日本税理士会連合会 第7回税理士実態調査2024、中小企業庁『中小企業白書』)

4つの選択肢を並べて見る

次に、4つの道が3つの変化とどう関わるかを整理します。どれが正解かは、事務所の状況とご自身の意向によります。

選択肢 概要 ①若手減少への対応 ②AI進化への対応 ③M&A活発化の活用 向いている状況の例
継続 今のまま事務所を続ける 自分が現役の間は影響小 自分で新業務に対応 特に活用しない まだ現役を続けたい
縮小 顧問先を絞って規模を小さく 後継者問題を先送りできる 対応範囲を限定できる 特に活用しない 負担を減らしたい
内部承継 職員や親族に引き継ぐ 候補がいれば有効 後継者に任せられる 一部で活用も 継いでくれる人がいる
M&A売却 第三者に事業を承継 候補不在でも道が残る 新オーナーが対応 選択肢として活用 顧問先を残したい

どの列に、自分の状況が近いと感じるでしょうか。ぴんとくるものがあれば、それが今の現在地のヒントになります。売却がいちばん良い、という話ではありません。

今の自分の状況を知る5項目

正解はありません。現在地を確認するためのリストです。

  • 事務所を引き継いでくれそうな人を、具体的に思い描けるか
  • 顧問先からの依頼内容が、この3〜5年で変わってきたと感じるか
  • 同年代の先生から、廃業・売却・合併の話を聞いたことがあるか
  • 自分が第一線から離れる時期を、なんとなくでもイメージしているか
  • 承継やM&Aについて、誰かに相談したいと思ったことがあるか

3つ以上あてはまった先生は、次のよくある質問も参考になるかもしれません。


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よくある3つの問いに答えます

Q1. 今すぐ動く必要がありますか?

急ぐ必要はありません。ただ、選択肢を把握するのは早いほど幅が広がります。まずは現状を整理し、情報を集めるところから。決断はその後でも十分間に合います。焦らなくて大丈夫です。

Q2. AI化は、小さな事務所にも関係しますか?

顧問先の規模にもよりますが、中小・個人の顧問先でもクラウド会計は広がっています。AI化の波は、自分の事務所より先に、顧問先の側からやってくる可能性があります。だからこそ、自事務所より顧問先の動きを見ておくことが役立ちます。

Q3. 業界再編とは、具体的に何が起きているのですか?

税理士法人や大手が個人事務所を引き継いだり、複数の事務所がグループになったりする動きが増えています。売り手の側から見れば、選べる相手が増えたとも言えます。廃業件数の詳しい変化は、業界動向をまとめた別の記事をご覧ください。

まとめ

税理士業界のこれからを、若手の減少・AIの進化・M&Aの活発化という3つの流れから見てきました。この3つは、今すぐ決断を迫るものではありません。ただ、選択肢を先に把握しておくと、いざというときの判断がずっと楽になります。急がなくていいのです。そして、一人で抱え込まなくても大丈夫です。事務所のこれからについて、よければ一緒に考えてみませんか。


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