朝、事務所のシャッターを開けながら「あと何年、この席に座れるだろう」とよぎる日が、増えてはいないでしょうか。

同期が引退した報せを受け取ったとき、若手のスタッフが「先生、いつまでやるんですか」と何気なく聞いてきたとき。胸の奥がざわつく瞬間が、確かにあるはずです。

この記事では、税理士の平均年齢の推移、業界全体の年齢構成の今、そしてこれからの選択肢の入口を、先生と一緒に整理していきます。先に申し上げると、迷いを抱えているのは先生だけではありません。最新の第7回税理士実態調査(日本税理士会連合会、令和6年実施/2025年公表)が、その輪郭をはっきり見せてくれています。


業界全体は、いま何歳なのか

棒・折れ線グラフのイラスト

「自分の事務所が高齢化している」という感覚を、まず客観的な数字で受け止めてみます。

日本税理士会連合会が10年ごとに実施している実態調査の最新版(第7回、令和6年実施・2025年公表、有効回答3万8,607件・回答率44.8%)によると、税理士の年齢構成は次のとおりです。

年齢層 構成比
20〜30歳代 6.6%
40歳代 18.1%
50歳代 21.5%
60歳代 25.7%
70歳代 22.0%
80歳代以上 5.9%

60歳以上を合計すると53.6%(25.7% + 22.0% + 5.9%)。業界全体の半分以上が60代以上、という構造です。70代以上に絞っても27.9%(22.0% + 5.9%)で、4人に1人を超えます。

開業税理士に限るとさらに高齢に偏ります。同調査では、開業税理士の60〜79歳合計が55.9%、80代以上を含めるとさらに増えると報告されています。「うちだけ年齢が上がっている気がする」という違和感は、業界全体で見ると、むしろ平均的な姿に近い、と言えます。

平均年齢の推移——若手はどう変わったか

10年単位で見ると、税理士業界の年齢構成は、若手側から先細っています。

直接比較しやすいのは20〜30代の若手比率です。第5回調査では11.5%だった若手の比率は、第6回(平成26年)で10.9%、第7回(令和6年)で6.6%まで縮小しました。約10年で4割減、という変化です。

調査回 公表年(参考) 20〜30代の比率
第5回 平成16年 11.5%
第6回 平成26年 10.9%
第7回 令和6年(2025年公表) 6.6%

注:他の年齢階層については、調査回ごとに区切りや集計方法が変わるため、本記事では直接比較可能な20〜30代の動きに絞って整理しています。

若手の入りが細る一方、60代・70代の「現役」は厚みを増しています。これが「平均年齢の推移」が右肩上がりで進んできた中身です。なお、日税連の公表は構成比ベースが中心で、税理士の平均年齢そのものの数値は公表されていませんが、構成から逆算すると60代前半が中央値帯と見るのが自然です。

なぜ、業界全体が同時に年齢を重ねたのか

「自分の世代だけがたまたま年を取ったのか」と言えば、そうではありません。複数の要因が重なって、業界全体が同じ方向に動いてきた、と捉えるほうが実態に近いと言われています。

要因 中身
受験者の減少 国家資格全般で言われている傾向で、税理士試験の受験者も長期的に減少してきたとされています
試験制度の特性 5科目合格制で取得まで時間がかかり、社会人受験が多いと言われています
国税OB制度 一定の勤務年数を経た税務署退職者が登録できるため、登録時点で年齢が高い層が一定数を占めるとされています
引退タイミングの個別差 健康なうちは続けたいという声が多く、明確な定年がないことが特徴です

どれか一つの問題というより、これらが緩やかに重なって、いまの年齢構成ができてきた、との見方が一般的です。


📋 「事務所の将来を考える5つの問い」——1分で振り返ってみませんか?

この記事を読んで「業界の数字は分かったけれど、自分の事務所はどう動くのが正解か、まだ整理できていない」と感じた先生へ。

5つの質問に答えるだけで、今のご自身の気持ちや考えが少し見えてきます。診断や評価ではありません。「今の自分はどう感じているか」を確認するための、小さな振り返りです。

※ 相談や面談ではありません。回答内容が外部に公開されることもありません。ご自身のペースで、気軽にお試しください。


「高齢化」は、廃業や売却に直結するのか

数字を見て、急に「閉じなきゃ」「売らなきゃ」と思う必要はありません。年齢が上がっている=即・廃業や売却、ではないからです。

参考までに、廃業の側の数字も並べてみます。中小企業庁『中小企業白書 2025』では、税理士業の廃業率(2024年)が業種別でトップ水準とされています。帝国データバンクの2025年調査でも、税理士・公認会計士事務所の休廃業・解散件数は前年から大きく増加した、と報告されました。

ただ、これらは「すでに動いた人」の集計です。先生がいま立っている地点とは、必ずしも同じ場所ではありません。年齢構成や廃業件数の数字は、「先生に今すぐ決めろ」と迫るものではなく、「同じ世代がどう動き始めているか」を見せる地図のようなものです。

先生の前にある3つの選択肢

事務所をこの先どうするか。大きく分けると、選択肢は3つです。どれが「正解」ということはありません。

1. 続ける

スタッフの増員、IT・クラウド会計の活用、業務の絞り込みなど、運営の負担を下げながら現役を続ける道です。健康と気力が続く限り、いまの形を維持したい、という選択は、十分に成り立ちます。

2. 譲る

身内承継、職員承継、第三者承継(M&A)の3パターンがあります。同業の若手事務所への譲渡や、顧問先を引き継ぐ形での合流など、規模やご縁に応じた選択肢が広がってきています。

3. 閉じる

廃業も立派な選択です。顧問先を丁寧に他事務所へ引き継ぎ、ご自身の生活を守る判断は、何ら後ろ向きなものではありません。ただ、廃業は「決めてから半年〜1年」の準備期間を見込むケースが多いと言われており、早めの情報収集が結果的にご自身の安心につながります。

3つを並列で眺めることが大切です。「他の道も知った上で、いまの道を続ける」のと、「他の道を知らずに、いまの道しかないと思っている」のとでは、毎日の気持ちが違ってきます。

同じ世代の先生は、いま何を考え始めているのか

特定の事例をご紹介することは控えますが、業界でよく耳にするパターンとしては、次のようなご相談が多いと言われています。

  • 「あと5年は続けたいが、その先が見えない」というご相談
  • 「顧問先に迷惑をかけずに区切りをつけたい」という相談
  • 「身内に継ぐ気はない。職員も継ぐ気はない。第三者の選択肢を知りたい」というご相談
  • 「閉じる、を選んだ場合の手続きと費用感を知っておきたい」というご相談

ご自身の状況に近いものはあったでしょうか。チェック項目として、こんな問いを置いてみます。

  • 顧問先の平均年齢は、ご自身より上か下か
  • 後継者候補(身内・職員)の有無
  • 健康面で、向こう5年の業務継続に不安はないか
  • 配偶者・ご家族と、引退時期の話をしたことがあるか
  • 1年後・3年後・5年後の事務所の姿を、言葉にできるか

どれか一つでも「言葉にできない」と感じたら、それが次の一歩のヒントです。

よくあるご質問(FAQ)

Q1. 税理士の平均年齢は、結局のところ何歳ですか?

A1. 日本税理士会連合会の公表は構成比ベースが中心で、平均年齢そのものの数値は公開されていません。第7回実態調査の年齢分布(60代25.7%・70代22.0%・80代以上5.9%)から見ると、中央値帯はおそらく60代前半と推察されます。「業界全体の半分以上が60歳以上」というのが現状の輪郭です。

Q2. 廃業を選んだ場合、顧問先への影響はどうなりますか?

A2. 顧問先の引き継ぎ先を確保することが先生の最後のお仕事になります。同業の若手事務所や知人税理士への紹介、税理士会の支援などが選択肢として挙げられます。半年〜1年の準備期間を見込むケースが多いようです。

Q3. 売却(第三者承継)は「売れる事務所」でないと無理ですか?

A3. 顧問先の継続率、業務のIT化度合い、立地など複数の要素が評価対象になりますが、「規模が小さいから売れない」とは限らないようです。まずはご自身の事務所の現状を整理することから始めるのが一般的と言われています。

Q4. 「まだ決められない」段階で相談してもよいのですか?

A4. むしろ、決めていない段階のほうが選択肢が多く残っています。決めてから動くのではなく、「決めるための材料を集める」段階で第三者に話す方が、結果的に選択の質が上がるケースが多いようです。

まとめ

最後に、3点だけ持ち帰っていただけたらと思います。

  1. 業界全体の60歳以上比率は53.6%。先生の事務所だけが高齢化しているわけではない、という事実
  2. 続ける・譲る・閉じる、の3つを並列で眺めることが、いまの段階で先生にできる最も建設的な準備
  3. 動くか動かないかを決める前に、「いまの自分はどう感じているか」を言葉にしてみるところから始めても遅くはありません

数字は地図に過ぎません。歩く道を決めるのは、いつでも先生ご自身です。


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